■Silent■

七色にうねる湖
折れそうな橋  踏み出せない蛹

何も知らずにいれば良かった

乗り遅れてしまう  夜が近づく
太陽が燃え尽き  また灰になる

乗り遅れてしまう  夜が近づく
太陽が燃え尽き  また灰になる


■森海(しんかい)■

青い森  波のようにうねる木々樹木の海
柔らかく凶暴に穏やかに残酷に踊る

花びらが息切らし涙を零すように散る
一つ散る二つ散る  水を欲しがりすぎてた

細胞は泡の藻屑へ

刻まれてた墓標の文字探し泳ぎに出たけど
深すぎて届かないやがて身体が溶け出す

体液が混ざり合いまた次の葉の息吹が
壊れてゆく音は聞こえず  剥き出しの傷も麻痺する


■鈴■

また明日も会えると信じてた約束のあの音

いつも隣にいた近づいてくる鈴の音色と
誰も気付かなくても凍えそうな夜過ごしてくれたね

朝もやが薄れて消えゆく  また今日もひとときのお別れ

日差しが強すぎたから全ての窓塞いだ
この国の王様は鈴鳴らす友達と二人

眠れない夜には訪ねてくれたいつもの合図
繰り返される夜どんな時にも変わらぬ笑顔

窓の外突き刺す眩しい太陽が痛い

また今夜も会えると同じ夜待ち続けてた
そして目の前は濁流の渦  飲み込まれそうな漆黒の夜
去りゆく約束の音  薄れてくあの声が…
遠くへ…  遠くへ…


■翡翠の橋■

ささくれだらけの指先で  青い夏の記憶なぞる
行き場を無くした原石が深い川底に沈む

大粒の雨風の壁が  川越えの橋さえぎる
大輪の蓮の花びら  水滴だけ美しく

次の朝に怯えた欠けてゆく翡翠の橋
目の前の別れ道がただ連なるだけ

近すぎて  近すぎて  近すぎて  見えない
遠すぎて  遠すぎて  遠すぎて  眩い
たまゆらの  たまゆらの  たまゆらの  さざ波
夢の中  手探りで彷徨う

届ける事出来ずに閉じこめた玉手箱
残酷な時計  消えかかる翡翠の橋

ちぎれ雲  ちぎれ雲  ちぎれ雲  見渡し
少しづつ  少しづつ  少しづつ  踏み出す
はにかんだ  はにかんだ  はにかんだ  横顔
遠ざかる  遠ざかる  遠ざかる  翡翠の橋

永遠があるのなら…


■コールドスリープ■

朝霧の中で東を見上げた  水の粒の産声を聞く
降り増さる埋もれ木の澱の底  密かに隠る悔恨の珠が

この浮き雲に乗れない
時が早すぎて日陰ばかり色濃く伸びる

黒い  雨  滲みる

色褪せ果て醒める前に光陰の彼方で
凍てつきながら眠ろう

徃にし柔らかな記憶も
水晶に閉じ込め悠遠の宙で

静かに  冷たく  久しい  眠りを

羊水の中の滑らかな響き
胎児の頃の祈り


■境界線■

風に咽す  過去も  今も  走る  霞む  惑う
霧の粒が空っぽの身体に絡みつきその先の行く手を拒む

振り返ればぐるぐると終らない迷い路
露ばかりの戯れにあつらえた迷い路

立ち止まる見慣れた夢  境界線の手前

しぐれの雨が打ち返すつかの間の夕凪
諦めのため息の中横たわる夕凪

まどろみの奥でゆらう色無き無人の船

探しあぐね見え分く百合  境界線の手前


■サヨナラカゲボウシ■

草葉の露が誘う丸い岸辺で
吸い込まれそうなねじれた空気 意識が薄れてゆく

形とどめず藍色の虚空の狭間で

一粒の涙雫になり此岸の橋濡らした
近く見えた影触れるにはあまりにも遠く深く

揺れる波紋の中でにじむ微笑み
届く事ない 永劫の虚空の狭間で

音の無い世界から微かに息遣いが聞こえる
ぼやけてた線が繋がる輪郭も匂いも色も

水面の奥に漂ったまま風に揺れる瞳
西の光に照らされてサヨナラと静かに告げる

別れの時が来る
サヨナラカゲボウシ


■向日葵■

いつも振り向かず駆け抜けた早足で
気がつけばこんなに遠くまで ぬかるみにも気付かず

見ない振りをした薄れゆくまぼろばも
雑音ばかりで聞こえないあの日聞こえた声が

夏の葉陰に覆い隠され
あの向日葵が眩しすぎて見えない

同じ月日が巡れど 同じ色は描けずに
また一つ描き足した砂漠の足跡

草いきれに囲まれ 暮れ六つの鐘が鳴る
水浅葱の小路を ゆっくり 立ち去る 小さな約束して

鍵をなくしたおとぎの国 金色の花が咲き乱れ
魔法の封印は永遠に いつかここに帰る日の為に


■絹の絲■

思い出せない位遠い過去に降り積もる雪が
息も出来ない程の深い闇に隠れてた

重い空 鉛の夜 あてもなく待ち続けた

ゆるやかな丘の上見下ろす景色 遠くから眺め
映画のように過ぎる時間の中に揺れていた

重い空 鉛の夜 力なく足音に耳澄ましてみる
雲がかき消されてく 舞い降りた初めての夜明け

腕の中の絹の絲 暖かく少しずつ心溶かし
こんな小さな奇跡が今 鮮やかに色彩染めてゆく

腕の中の絹の絲 壊れそうで膝抱え震えた日も
次の奇跡が今始まる 粉雪は柔らかなぬくもりの中へ


■赤い星を探して■

ひとつづつ夢をこぼしてかすれてく季節が
この道はどこに続いてるの いつも描いた未来
このまま時のざわめきに色あせないように
ゆっくり歩き続ける赤い星を探して

いつの日も強い風吹く坂道を歩いた
あの頃と同じ胸の奥にいつも抱えた虹が
このまま時のざわめきに色あせないように
ゆっくり歩き続ける赤い星を探して

西の空かがやく沈んでゆく光が消えてしまっても変わらない思いを
風に揺れる水面をあの日聞いた言葉を見失うことなく


■spiral■

どこまでも続く雲の切れ間からこぼれてくるような淡い思い出の日
ずっと変わらない

紺碧の青が深い色を増し滲んでは消えた遠いあの夏の日
ずっと変わらないいつも消える事無く

立ち止まる事出来ず迷いながら 少しずつ変わり行く白い雲追いかけた
言葉より語りかけるその瞳映し出す悲しみも空の青溶かしてゆく

同じ季節が巡り思い出すたびに
記憶の河の流れ やがて辿り着く場所

きっと柔らかな光
いつかいつの日かまた巡り合う


■みえない色■※

ずっと長い眠りに包まれてた ウツロな日々
ガラス細工で彩る小さな庭 壊れやすくて透き通った朝

重いドアを開ける 目が眩むほどまぶしい陽射し
目を覚まさずこのままいたかったのにあなたはふいに目の前にいた

心の無い言葉達にいつも振り回されてた
宝物を探すように 隠さないで全てを

その奥にある深い色は誰一人も気付く事はなく
瞳に沈む隠された傷を癒してくれるものはどこにあるの?

涼しい風が通り抜けてゆく あなたは何が本当は欲しいの…?


■月と影■

雨上がり青い夜 ぼんやり浮かぶ白い月
一人歩く帰り道小さな影色濃く

月が真実を照らしてる 隠す事も出来ず 深い心の奥も闇も
この世界に迷い込んで子供のように足すくめた
濁った雨ばかり降り続けた日々 思い羽傘の代りにして

遠くから見透かした笑い声が聞こえる

月が真実を照らしてる 見失いそうな祈り 深い意識の先の声も
この世界に迷い込んで子供のように足すくめた
濁った雨ばかり降り続けた日々 思い羽傘の代りにして

やがて空は癒しの雨 洗い流したい まとわりついた影を


■遠い日だまり■

冷たい光が差し込む窓辺に閉じこめられた空間漂い
一人じゃ抱えきれなくてそこから抜け出せずにいた君が見たもの

戸惑うばかりで持て余した
遠い日だまりに 揺れるかげろう

前を向こうとするけど光の狭間に揺られたままでたたずむ
戸惑うばかりで持て余した遠い日だまりに 揺れるかげろう

「そこに見えたのは信じられるもの?」

君が歩き始める 光があれば扉の向こう見えないけれど今は
かすかに息を潜めてた心の日だまり 鼓動が響く


■青い夕闇■

飾り立てた嘘に惑わされ 踊り疲れることに怯えてる
見えていたものさえ見えなくなってゆく
終わらない夏のように狂い咲く花達

堪えきれず凍えそうで 隠れ家を探した

青い夕闇 霧の向こうに道の行方を告げる声聞く

その理由もわからずに罪の重さを背負い生まれ落ちた世界
永遠の場所を探すために

夜が全てを包み込む頃遠く広がり息付く
浅い眠りをかき消すように強い鼓動が波打つ

壊れかけたそのかけらを拾い集め見上げた瞬間

夜が全てを包み込む頃遠く広がり息付く
青い夕闇 霧の向こうに道の行方を告げる声聞く


■AM4■

すれ違う地平線 向こう岸と出会う静かな時が
薄い膜張ったような空気の中をただ泳ぐ魚

静寂のなかで 言葉もかすれ 息をひそめ

一つだけ消えないものが それだけ頼りにいつでも
ぬくもりの行方をたどり
そっとまぶたを閉じたままで眠る
静寂のなかで 薄れゆく夜見送って

思い出が増えてゆく度覚えた悲しみを抱きしめ
風に飛ばされないように大切に手のひらにしまった

その先に見える光が指す鮮やかに照らす場所へ


■時空の船■

眩暈がするほどの朝焼けの中で
目覚められずに夢の続き願ったいつも
やり直せない過去 塗り潰した地図 戻せない時にしがみついたまま

思い出は砂となり風の中に かき消され去り行く

時空を超えてゆく まぶしく光る船

流れる 時のかけらが 飛び交う 交わりながら
呼ぶ声 一つになって 聞こえた やさしく包む

あふれ出す光の粒 包み込んで

時空を超えてゆく 未来に続く船

流れる 時のかけらが 飛び交う 交わりながら
呼ぶ声 一つになって 聞こえた やさしく包む


all lyrics by kumiko otani
(※ Collaboration with manami)